感想文

米国情報通信産業視察を終えて

久留米情報システム株式会社 関 弘 文

 10日という短い視察でほんの一面からの見方であるが、初日、北カルフオルニアの中心である人口75万人カルフォルニアて4番目の大きさで小規模な町サンフランシスコに人のエネルギーとさまざまな民族、文化の凝縮を感じさせられた。ロスアンゼルスでは空港の大きさなど途方もない大きい町で何か多彩な魅力を持つ町である。サンデイエゴはスペイン、メキシコの支配下にあつたため、その影響を受けており、アメリカ太平洋艦隊の主要基地として栄え、多くのメキシコ人をうけいれている。治安も良く、美しい安らぎのある場所が多く観光の町である。このような米国西海岸の都市のパソコンの普及は事所、家庭にいき渡りつつあり、また利用目的がワープロ、表計算からインターネットなどのネットワークにかわりつつあり、ネットワークが形成され、電話テレビに次ぐ大衆のメデイアとなり汎用性のたかい社会と個人を結ぶものに早いスピードで進んでいます。
 そしてインターネツトの一面からみればインターネツトモールを開設するだけの初期段階は終わり、仕組みづくりが真剣に討議されており事業化の試行錯誤がおこなわれています。今回訪問したGreenFlash、Golfweb、インフオメーションネットワークなどからも伺える。日本より1ー2年早いように思える。
 ネットワーク産業の事業化はベンチャーが必要であるが、米国のベンチャー企業の経営のコンセプトはスピード経済において強い成長志向を持ち、それにエクイテイ市場を徹底的に活用し株式をベースとした資金調達、企業評価、社員の報酬であり、ベンチャー企業の目標は雇用の確保や職場安定でなく株式の価格を高める仕組みなど企業の見学を通じ実感できた。
 この様な米国にたいして、日本はベンチャー企業に対する支援策が未整備など制度面があり。ベンチャー企業も早期にビジネスを軌道にのせ株式公開をめざす強い意欲が乏しいなど大きな違いから考えるとベンチャービジネスのやり易い実態の米国が日本より今後も早いスピードで展開していくと思える。
 この度の米国視察で地元の企業は仕事を通じて地域のために何ができるか「地域への貢献度」をもう少し考えていかなければならないことを痛感しました。そういうなかでインターネット協議会への考え、接し方も今までと少し違う何かを感じるようです。




米国マルチメディア視察感想

久留米工業大学 青木 征男

 今回の視察でインターネット関係のベンチャー企業をいくつか見てまわって、アメリカ社会のエネルギーを感じた。例えば、カルフォルニアのGolfWeb社。この会社はゴルフの試合の状況をWWWに流したり、ゴルフ関連商品のインターネット通信販売をしているだけでなく、ゴルフ場の予約もWWW上で出来るようにしている。しかも、日本のゴルフ場の情報もある。しかし、会社はまだで来たばかりであり、赤字であるが、将来的には採算がとれだろうとのこと。このような会社に投資する投資家がいるのだ。このような多くのベンチャー企業の中からいくつかの成長企業が生き残るのであろう。

 San Diegoの HyperMedia Centerは設立して6週間目だという。ここは初心者から専門家まで幅広い層を対象に、ハイパーメディアやインターネット関係の教育を行なっている。技術者を再教育する企業である。教師は近くの大学の教員などに依頼するとのこと。この場合、教育する人材の育成が難しいと思うが、企業と大学との協力をうまく行なっているようである。しかし、この会社も設立して1月半という若い会社である。このような企業が多く生まれるところにアメリカのエネルギーを感じた。

 移動のバスの中でガイドの方から次のような話を聞いた。日本とアメリカとの諸事情の違いを感じた。

1.市内通話料金は基本料金の中に含まれているから、インターネット接続のために
  24時間電話回線を使っても電話代は不要です。

2.日本のサラリーマンの所得税は源泉徴収され、年末調整があるので、殆んどの人は
確定申告が不要である。しかし、アメリカでは基本的に個人が確定申告をすることになっている、昔は領収書その他の資料を揃え、税理士さんに確定申告の書類を○万円支払って書いてもらっていた。しかし、何年か前に家計簿ソフトが発売された。家計簿ソフトが確定申告の書類を自動的に作成してくれるので、多くのサラリーマンがパソコンとそのソフトを購入し、自分で確定申告するようになった。

3.キッチンには電話回線が2つあり、一つは普通の電話、もう一つはインターネット
(パソコン)用である。主婦が買いものをしたとき、確定申告のために家計簿をつける必要がある。毎日の買い物のレシートを見ながらをパソコンソフトを使って入力するので、キッチンにパソコンが必要だ。

4.電話、電気、ガスなどの銀行自動引き落としはない。自分で払い込む必要がある。
最近はインターネットを使って、銀行から自動的に支払うことが可能になったので、楽なった。

 日本とアメリカでは社会システムが大きく異なるし、生活習慣も異なる。アメリカで家庭にパソコンが普及し、インターネット関連のベンチャー企業が起こるにはそれなりの背景があるようだ。環境の異なる日本ではパソコンやインターネットが家庭に普及する(使われる)にはまだまだ時間がかかりそうだ。





アメリカ視察での感想

システムラボラトリー(株) 外山 吉計

 今回の視察は、私のような井の中の蛙にとっては大きなカルチャーショックでした。
多民族国家のスケールの大きさ、懐の大きさを体感させられました。
 奇抜なアイデアも、そういう多民族の葛藤と融合の中から出て来るのだろうなと思いつつ、しかし影としてはストレスも大きんだなと思いました。なにせ肥満が多い!
 アメリカでは他者と違うことを言うととりあえずは認められるそうです。日本はと言えば、他と違うことを言うには勇気がいります。(はじかれる可能性が大だから)アメリカ的考えの土壌がベンチャー企業の育つ所以らしい。インターネットサーフィーンをするには、これは大事な企業運営かも?
 それから、何社かベンチャー企業のお話しを聞いていると、当然日本はターゲットに入っているホームページを作成している。私達は当然日本語なので日本しか考えていないような気がする。
 もっとグローバルなホームページを創造しなくてはと、考えさせられました。
米国マルチメディア先端視察に参加して

(有)エースーケン 古賀直樹

 本家本元のインターネット関連企業・大学・行政をこの目で直接見ることが出来ると言うことで、希望を膨らませて参加しました。しかし、希望が大きかった割には中味は、いまひとつガーンと来るものは、見つかりませんでした。しかし良く考えて見ると私たち日本人はいつの間にか、目先の結果しか関心を持たなくなってしまっているようです。しかも、子供たちのテストのと同じように、答えが一つで、すぐに結果が出るものだけに反応を示してしまうようになってしまっています。私にとっては、そうしたことを根本から考え直させる視察であったような気がします。

 少し前置きが長くなりましたが、今回視察したホームページなどのコンテンツ制作をしているベンチャー企業の経営者たちから、直接話を聞いて思ったことは、彼等は仕事を楽しんでやっていることです。しかも急ぐことなく、そしてパワフルにです。私が見る限り、自分で面白いと思ったことに、かなり周到な時間をかけながら、わきあいあいで仕事しているという印象が強かった。医療情報提供”メディシンネット”を運営している経営者は医者で、彼いわく「医者のほうが当然儲かるが、だからこそ人がやらないから自分がこの事業に目をつけた。」とさらりと言ってのけた。フラットでオープンな、そしてそれを支えていく風土ができ上がっているのかなあと思った。とにかく、かざりっけがない。物価や事務所代、通信費などの諸経費が安い。 同じお金でも日本より数倍長持ちできるであろう。その間彼等はがんばれることができるのだと思います 。日本が半年で結果を出さなくてはいけないことでも、彼等は2〜3年、時間をかけることができます。そして企業として目鼻がたてばベンチャーキャピタルによってM&Aで企業を売ことができる。そのときに創業利益を手にする。それを前提に社員にもストックオプションとして自社株で引っぱっておくことができる。

 今回の視察で感じたことを決論から言いますと、私たち日本人とアメリカ人がどうも80年代を境にして逆転したような気がします。すなわち、彼等アメリカ人が型は古いが燃費の良い日本車に乗って、私たち日本人がどうも昔のアメ車に乗っているような世の中の仕組になってしまったのではないだろうかということです。 今回彼等アメリカ人やっているベンチャー企業の内容にはそれほど驚きはしなかった。日本でもその気になればできることです。しかし、なぜ私たちにできないかというと、2年も3年も燃費の悪いクルマに乗って走り続けられない社会システムに現在なっているためです。この社会システムをいちはやく切り替えたところから次の時代が始まるだろうと思います。
 私は今回の視察を通じてみんなが協力して、この久留米地域にフットワークのよい情報通信網を整備し既成の利害関係に囚われないオープンな関係を作ることが必要なことを痛切に感じました。
 まだ、今だったら間に合うと思います。久留米がインターネット関連の分野において日本の中で他の市町村より頭一つ抜きに出れば、ベンチャー企業がこの地域で実験して見ようと全国からやってくると思います。アメリカのサンディエゴがまさにそうであります。サンディエゴは全米でインターネット普及率が全米平均より頭一つ抜きに出ているためインターネット関連のベンチャー企業がたくさん集まっているのです。私たち地元の人間たちがもっと積極的に情報インフラを推進し、インターネット接続者を増やして行けば21世紀の大きな扉が開かれることを確信したアメリカ視察でした。

 それからもうひとつ重要なことは明日の社会を担う青少年の人材育成にこそ力を注ぐ必要があることです。彼等こそ先入観なしで、より楽しいことに没頭できる唯一の人材であると思います。次の主役はファミコンになれ親しんだデジタル思考のできる青少年であります。彼等に新しい価値観を作ってあげることこそ、この久留米地域の大いなる変革につながっていくと思います。久留米地域の若者をこれから積極的にシリコンバレーに送ったらと思います。そうすれば大きな宝をもって返ってきてくれるかもしれない。彼等にもっともっとコンピュータやインターネットに関心を持たせるような環境を私たち大人はこれから作って行くべきだと思います。

 最後にこうした機会を与えていただいた市長さん始め関係各位の方々に感謝いたします。非常に楽しく、有意義な視察でした。




米国マルチメディア視察に参加して
                                     
久留米市議会議員 石橋 力

 まず、自分のスタンスとして何をどう見るのかですが、今回の私なりの目的は
 1.米国と日本の格差がどのくらいあるのか
 2.久留米の地域情報化に役に立つシステムはあるのか
 3.マルチメディアないしはインターネットが、将来広告通信媒体として、従来の
   新聞、TVに匹敵するものになりうるか 
 4.ウェブビジネスが将来経営的に成り立つものなのか
 と言う4点です。
 第1点については、まず技術面では、そんなに格差があるようには感じられません。しかしパソコンの普及率に格段の差があるようにおもえます。とくにスタンフォード大学に入学する学生の95%がパソコンをもっていると聞くとかなりの差を感じます。
 第2点については、当面の課題はひとりでも多くのひとがパソコンをもちネットワークをつくっていくことで、そのための環境作り、しいてはインターネット協議会やケーブルテレビ等の拡大をはかっていく方策を考えるべきだとおもいます。
 第3点については、米国ではe-mail等通信媒体として普及は加速するとおもわれ、最終的には新聞、TVに劣らないものになるようにおもわれ、これに遅れることは単なるトレンドに遅れるのではなく各都市間、ないしは国家間においても経済、文化面に多大に影響を及ぼしそうです。
 第4点については、ゴルフウエッブやグリーンフラッシュ等見ると、試行錯誤ではあるが期待を持てることは否定できないし、ベンチャービジネスにチャレンジする情熱は並々ならぬものがあり、投資家も理解をもっているので近い将来収益も確保できるものと思われる。
 以上の4点から、今後の私の目標はまず久留米市役所内部に情報通信課を新たに設ける、そして外郭団体であるKTT、インターネット協議会、ケーブルテレビ等の活性化を促進し、相互の連携を深める努力をする。
 民間レベルでは、パソコンの普及がわが国でも加速するとおもわれるのでベンチャーキャピタルの導入を促進し、あわせてウェブビジネスにも機会があればチャレンジしてみたい。
 努力目標はさまざまあるが、今回の視察が参加した若い経営者に一石を投じたことはまちがいないようです。   

感想

(株)西日本エージェンシー 石橋 勤一

 Qualcomm 社は街の郊外何の変哲もない田舎にあり、インターネット等通信網の発達により環境が良く静かな場所にありました。また他の部門は随分離れた地域に分散し社内のランシステムに依り不便はないようです。インターネット利用の中心がEメ-ル利用との事は我々の場合と多分同じでしょうが、それにしても一般家庭に於けるパソコンの普及と電話料金の違いにはただ驚くばかりでした。前者は確定申告の税制の為安く簡単な家計簿として使用されています。後者は市内の通話料は無料という日本では考えられないシステムでした。やはりコスト面でも米国は先にインタ-ネットが普及したのでしょう。ソフト開発面では米国のベンチャ-企業精神を熱く感じたが、そのバックアップシステム及びベンチャーキャピタルの考え方、会社を創業する為のコストの安さもあり日本と単純に比較は出来ないが目先の収入源を考えず一つの分野の専門企業としてシェアアップしデーターを集積生き残ることが成功だと考えている。その時[M&A又は上場]で会社を売ることで創業者利益を得る。我が国とは考え方が随分異なる様だ。訪問企業の中には、久留米でもその程度の事はすぐでもやれるし、我々の方がもっと素早く企業化できるものもあったが、彼らのギラギラした自信は何だ?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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 我が街久留米も中小企業あるいは今後創業するであろう企業の芽の為低コストで高度情報網の提供、基盤整備を積極的に促進すればまだまだ先進地にも追いつけるのではないだろうか。
 最後に今回の視察の機会を与えていただき感謝いたします。出来れば行政の情報通信分野の窓口を設けていただければ便利ですし米国の一般家庭の利用についてのリポートも見たいデスね。




所感および提案

(有)ヒエダデザイン研究室 稗田 英利

 アメリカのスケールの大きさというのを、あらためて見せつけられた視察であったと思います。シリコンバレー、オラクル社の最新のビル群に始まり、スタンフォード大学の広大なキャンパス、インフォメーション・ネットワーク社のメディシンネットの大きな夢まで、私たちを圧倒するに充分な内容でした。
 今回の視察団に参加するにあたって、私なりのスタンスで望んだつもりです。私たち民間の事業社は、いかにして商用利用のヒントを掴むか、久留米というローカルな地域でどんな事業が可能かということです。そういう意味ではゴルフ・ウェブ、ガレージ・ウェブ、最後のメディシン・ネットなど具体的な事例を直接、見聞きできたことは有意義でした。要するに最先端のアメリカにしても、まだまだインターネット利用の端緒についたばかりだということです。今後、光ケーブル等の通信ネットワーク機能が充実するまでは本格的な事業展開には至らないということだろうと思います。ただ、アメリカではこの分野に膨大な取組みが試みられ、相当なノウハウの蓄積がなされている、それはゴールドラッシュに例えられるように大きなリスクをともない、個人にも負担を強いることでもあるようです。
 メディシン・ネットの推進者、デニス・リー氏の言葉が最後に耳にのこっています。「私たちは、ボランティアをやっているわけではない。わたしたちが今やっていることは、未来への大きな投資である。」と。

 ところで、今回の視察を通じ久留米市および関係者に要望したいことがあり、提案いたします。私ども民間業者としては「電子マネー」の開発にたいへん関心を持っている次第です。「電子マネー」が一般に流通するようになりますと、お金そのものの流れはもちろん、商品をめぐるさまざまな動きがすっかり変わってしまう状況が現出します。社会や人のありようが、まさに大きく変貌するわけです。新しい時代に久留米がどう地域をリードしていけるかは、単に経済だけの問題ではありません。
 そこで、他の地域に先駆けてこの久留米で「電子マネー」の実験を誘致していただくことを強く要望致します。ご存じのようにロンドンの小さな市で実験が行われています。混乱を少なくするためには、あまり大きな都市では実験に向きません。それから、そこそこインフラ整備が整ったところでなければなりません。久留米は適していると思います。ぜひ、「電子マネー」実験に取り組んでいただきますよう、お願いします。




マルチメディア視察団に参加して
                                      
久留米市議会議員 広田 秀義


 10月6日、集合場所であるリサーチセンターをあとにして今回のツアーがスタートしました。事前準備でアメリカから電子メールを日本に送りたいと思ってどうしたらいいか調べていましたが、十分とはいえない状態での出発となりなりましたが、気持ちはすでにアメリカに飛んでいました。
 最初の訪問のデーターベースで有名なオラクル社に行ってみてオフィスビルのデザイン(ハードディスクのイメージ)と環境の良さに驚きました。また、マイクロソフトのプレゼンテーションソフトを使った説明にはこれからの研修ツアーの成果を大いに期待しました。
 研修を通じて感じたことは、オラクル社の500ドルパソコンやスタンフォード大学における卒業論文の電子メールによる提出、在宅勤務の定着などをみるとデータ通信基盤が整備されている事を裏付けていると感じました。また、ガイドの話では、市内通話料金はかからないと言うことを考え合わせてみると個人が支払う経費も少なくてすみ、インターネットの普及には環境が整っています。
 WWWによる情報の提供も、単に情報の提供のみならず、GolfWebやメディシンネットなどの話しを聞いているとビジネスとしてうまく行けば、一情報メディアとしてでなく、これからの新しい産業として成立していく事だろうと思います。しかし、それをしていくためには、社会の仕組みも変わっていかなければなりませんが、元来、合理的な考えを持っているアメリカ社会にとってはたやすいことだろうと思います。そのようなことは、日本でも予見できないことはありませんが、しかし、越えなければならないハードルは、わが国の方が高いと感じました。しかしながら、マルチメディア社会の到来が時代のトレンドであるとするなら、米国以上の努力をしなければなりません。それは、国内における都市間の競争をリードしていくのみにとどまらず、地方都市が国際社会の中で競争をしていかなければならなくなる。逆に言えばそれができると言うことです。このことは地方分権を推進していく大きな牽引者になり得ると思います。
 そこで、久留米鳥栖地域インターネット協議会としてどうしていかなければならないかという課題については、インターネットに関する人口を増やす事が必要である。そのためには会員を制限することなく対応していくこと(サポート体制も含めて)、アクセスポイントを主要都市には開設していくこと、また、インターネットの有効性を広めていかなければならないと思います。そのためには、協議会のままでいいのか、運営組織の検討や、それを支援していく産学官の協力体制の整備、情報ハイウェイ(高速通信網)の整備(ローカルエリヤ内)を協力に推進していく必要があります。
 アメリカでは、ベンチャー企業がパートナーを組みながら有機的に連携して発展していこうとしているのを強くしていく感じましたし、そういう事でもわが国におけるハードルは高いと思いますが、マルチメディアに乗り遅れないように危機感を持たなければならないと思います。
 今回の研修では、特にマルチメディアの光の部分は研修できたと思うのですが、陰の部分についても研究する必要があると思った次第です。
 最後になりましたが、日本に向けて電子メールを送ろうと言うことでノートパソコンをかついで渡米しましたが、時差ボケによる睡眠不足と、パソコンの設定がマッチしなくて何回接続しても文字化けを起こし問題点を解決できなくて、とうとうできませんでした。残念でたまりませんが、もし、チャンスがあれば再度挑戦してみたいと思っています。
 この研修を支えていただきました関係各位に深く感謝申し上げ報告にかえさせていただきます。



米国マルチメディア視察団 参加感想および提案

大成ジオテック株式会社  横山 巌

1. はじめに

 平成8年10月6日より10月14日までの日程で、久留米・鳥栖地域インターネット協議会の主催による米国マルチメディア視察団に参加した。視察先は、米国西海岸のサンフランシスコ、サンディエゴ、ロサンゼルス各都市近郊の1大学、7企業である。本視察の目的は、インターネットによる通信ネットワークの多様化と高度化が、今後の地域社会、企業、家庭等に与える影響をインターネット先進国である米国で調査することである。
 調査内容の詳細については報告書に譲るものとし、ここでは、日米間の違いについて聞いたこと、感じた事を述べるものとする。

2.都市と郊外、フリーウェイ

 今回の宿泊地サンフランシスコ、サンディエゴ、ロサンゼルスは、米国西海岸の3大都市であるが、都市のスプロール化が進展しており、都心には近代的な高層ビルが林立するものの、その足元は人通りも少なく、夜間や休日はゴーストタウンのようであった。(もちろん、米国で夜間の一人歩きは非常識であり、団員は安全第一に行動した?)サンフランシスコでは地下鉄も走っており、都市の活気も感じられたが、ロサンゼルスは休日滞在であったためか不気味なほど静かであった。現地添乗員の話では、ロサンゼルスの高層ビルには空きが多くなっているということであった。
 では、人々は何処にいるかというと、事務所も住宅も郊外へ向かって広がっているようである。都心から、片側3車線以上もあるフリーウェイを使って郊外に向かうと、数十分で市街地を離れる。乾燥した土地でもあるため車窓に緑は多くはないが、緩やかな起伏の中に住宅街や事務所ビルが散在している。
 周知の通り米国は車社会であるが、見渡す限りの広大な国土を縦横無尽に無料の高速道路「フリーウェイ」が走っているのを見ると、日本の社会資本はまだまだ遅れているなと感じざるを得ない。このフリーウェイの存在が、コストが高く治安の悪い都心から、コストが安く治安の良い郊外に、事務所や住宅を移転させているのであろう。(ちなみに、米国では治安はコストに算入される)
 郊外の事務所は、民間の開発によるビジネス・パークと呼ばれる事業所地域に開設されている。そこには近代的な高層ビルもあれば、事務所と倉庫を兼ねたような長屋風の建物もあり、さまざまな企業が入居している。入居コストは日本に比べて大変安いようであり、資本力の弱いベンチャー企業でも入居できる環境が整っている。
 このようなオフィス事情や交通事情も、米国でベンチャー企業が育つ理由の一つであろうと感じた。

3.ネットワーク進展の背景

 今回の視察では、資本力の弱いベンチャー企業が、まだまだ収益を生まないネットワーク・ビジネスを積極的に展開していることを知り、改めて米国のベンチャー・ビジネスの先進性とフロンティア・スピリッツに感心したところである。しかしながら、NASDAQのように米国ベンチャー企業の資金調達が日本に比べて容易だとはいえ、単なる先進性だけで、ネットワーク・ビジネスが盛んになったわけではないであろう。そこで、私見ではあるが、米国でネットワークが進展する社会的背景について次に考察した。
* ネットワーク・コミュニケーションが潜在的に望まれていた社会的背景
* 車社会、個人主義社会
* 時差がある広大な国土
* 都市のスプロール化
* 事業所・住居の分散化
* ネットワーク・コミュニケーションが実現されうる社会的背景
* ビジネスライクなビジネス形態(いちいち訪問したりしない)
* 廉価な通信インフラの整備(市内定額約3,000円)
* パソコンの普及(一般家庭でも納税申告のためパソコンが普及)
* タイプライタ文化(キーボード・アレルギーが無い)
 上記の事例をいくつか紹介する。
 日米ではビジネス・スタイルに違いがある。日本では相手と会うことがビジネスの基本とされている。このため事務所が集まり交通の便の良い都会に、さらに事務所が集中する。米国でも対人関係は重要だが、ビジネスでの時間の無駄は罪悪であり、「ちょっと、ご挨拶に伺いました」では意味がなく、また、事務所と事務所の間に距離があるため無駄な訪問は非効率である。
 米国での高速通信回線は、普及しつつあるものの日本に比べて大差ないようである。しかし、市内電話(低速系の通信回線)は使用量にかかわらず定額であり非常に安い。これが一般へのネットワーク利用を促進している。
 米国では、日本に比べて家庭へのパソコンの普及率が非常に高い。これを理由として、日本でも家庭へのパソコンの普及が図れるとする意見もあるが、それは統計のウソである。米国では、納税申告のため家庭にパソコンが必要とされたために普及したのであり、単なる先進性や興味で普及したのではない。米国では全ての納税者は自分で納税申告を行い、日本のように企業等で源泉徴収や確定申告を代行することはない。また、米国の納税申告では、申告したい経費全ての領収書やインボイスが必要であり、計算に大変な労力を要する。そのため、納税申告を自動的に作成する「クイッケン」という家計簿ソフトが爆発的に売れ、これを動かすためにパソコンが家庭に普及したのである。これが結果的にインターネットの家庭への普及を促したといえるであろう。(この話には余談があり、パソコンOSの雄であるマイクロソフト社が、「クイッケン」を買収しようとしたが、独占禁止法により阻止された。)
 また、現地添乗員の話では、最近の住宅には各部屋に電話回線が設置されており、書斎には電話、ファックス、パソコン用に3つ、台所にも電話、パソコン用に2つの電話回線が付くそうだ。さらに、(ロサンゼルスでは)都心からの事務所分散による交通渋滞緩和を目的とし、在宅勤務を促進するために、住宅専用地域であっても、電話回線の設置等を含む所要の要件を満たせば、住宅の一部を事業用として税金控除の対象とする行政措置が取られているという。

4.久留米地域における情報通信のあり方についての提言

 4-1.「なぜ提言が必要か」について
 情報通信に関して先進的な米国の視察をおこない、その実例を紹介することは、大変有意義なことだと思う。
 しかしながら、米国と日本の社会的な背景の違いや、日本の中における久留米地域の位置づけを考慮しないと、単なる事例紹介となる恐れがある。
 このため、久留米地域の実状を知り、かつ米国の息吹に直接触れた、我々視察団からの提言が必要とされるのではないかと思い、ここに私の考えを述べてみる。

 4-2.情報通信に関する米国の社会的背景(日本との相違点)

 情報通信に関する米国の社会的背景については「3.ネットワーク進展の背景」で述べたが、さらに、ネットワーク・ビジネスが成り立つ社会的背景として、
* ベンチャービジネスの仕組みが整備されている
 (資金調達が容易、ストックオプション制度、会社の売買に対する感覚)
* ネットワーク上に膨大な顧客がいる
* フロンティア・スピリッツ
などがあげられる。

 4-3.久留米地域における情報通信のあり方についての提言

1)情報通信インフラについて
 地域としての特徴を活かし、小回りのきいた、半歩先をゆく情報通信インフラを整備する。技術的に1歩先をいく必要はないが、少なくとも福岡市内で提供されるレベルの情報通信サービスが提供されるよう、常に情報通信インフラの更新を行っていく。
 特に久留米・鳥栖地域ではケーブルテレビが普及しているため、実験ではなく事業としてケーブルテレビを利用した情報通信サービスの提供行うことが望ましいのではないか。これにより、相乗効果としてケーブルテレビの普及も進むのではないかと考えられる。

2)インターネット普及の基地づくり
 小中学校や公民館・図書館等を中心としたインターネット普及のための基地づくりをおこない、誰でも(特に子供たち)インターネットに参加できる場所を提供する。

3)インターネット普及の人づくり
 ボランティアまたはアルバイト制度により、インターネット普及のための相談員を置き、インターネット普及のための人づくりをおこなう。また、久留米コンピュータ・カレッジと連携して、ホームページ作成などをアルバイトしてもらうなどして、技術者育成の一助とする。

4)ビジネスを動かす
 とにかくビジネスとしてインターネットの利用を試みる。提供するサービスは期間限定でも良いと思う。また、サーバやホームページについては、廉価で借りられるようにできないだろうか。技術的な支援も大学等にお願いできないだろうか。

5)産・学・官で動かす仕組みをつくる
 米国では、官による情報ハイウェイ整備、学による基礎研究、産によるビジネスが動いており、これらがお互いに相乗効果を生みながら動きを速めていっている。
 日本では、特に地方では、動きそのものが起こりにくいのが実状で、久留米地域はむしろ先進的な地域であり、久留米・鳥栖地域インターネット協議会はその中心に位置する。
 このため、久留米・鳥栖地域インターネット協議会を中心として、産・官・学の役割を明確にし、歯車が動くような仕組みづくりを期待する。

4.おわりに

 米国では、前述したような社会的背景のもと、ネットワーク技術の向上とネットワーク・ビジネスのサポートにより、SOHO(ソーホー:Small Office Home Office)と呼ばれる事業所分散や在宅勤務といった就業形態の変化、ならびに、ヴァーチャル・オフィスやヴァーチャル・カンパニーのような事務所を持たない或いは社員がいない仮想企業の設立が、ある程度は進んでいくことが予想される。
 一方、日本には日本独自の社会的背景もあり、米国と全く同じようなネットワーク社会が出現するとは限らないであろう。同じネットワーク技術を使ったとしても、異なる文化体質においては、それが社会に及ぼす影響は異なるものになるはずである。この点を考慮しつつ、久留米・鳥栖地域におけるネットワーク技術の利用方法について今後も検討を加えたい
 最後に、今回、米国マルチメディア視察の機会を与えて頂いた久留米・鳥栖地域インターネット協議会、久留米市、(財)久留米・鳥栖地域技術振興センターの皆様、また、視察途中に合流し心強いバックアップをして頂いた久留米市長ご一行、ならびに、佐田団長をはじめとする視察団メンバーの皆様に心から感謝するとともに、今後ともご指導ご鞭撻をお願いいたします。




米国マルチディア先進地視察報告書

久留米商工会議所青年部  倉 田 正 平
 

 21世紀は3Kの時代、高齢化、国際化、高度情報化の時代と言われている。この中で、高齢化は間違いなく到来することは十分に理解でき、我々、団塊の世代は当然のごとく高齢化の一大要素となり、それに対応しなければならないと言う意識があるが、これからの経済システムを大きく変えると言われている国際化と高度情報化が、今一つ実感を伴わず、それによって我々の仕事がどんな影響を受けるのか、それらにどう対応したらよいのか、よく分からないと言うのが正直な所と思う。特に高度情報化は情報の地域格差をなくし、大都市集中の経済構造を変更する可能性があり、今後の経済発展のキーとなると言われており、大いに興味があり是非この流れに遅れることなく乗り、地域の発展を図る必要があると思う。
 今回、情報化の先進地である米国のマルチメディア関連の企業等を訪問でき、最前線の現場で実際に携わる方々より直接話を聞くことができ、大変に参考となった。特別にいろいろと目新しいことが勉強できたと言うわけではなく、今まで本などで得た知識とそれほど差は感じなかったが、米国の情報化の取り組みをこの目でみ、肌で感じることができた事は大変刺激にもなり、力付けられるものであった。米国と日本では、経済構造自体異なる部分がありすべてが米国のようにとは行かないと思うが、進んでいく方向は間違いなく同じであると思う。
 情報基盤の整備を他の地域に先駆けて行い、物流のクロスロード、オフィスアルカディアに加えて情報のクロスロードとして日本全国に売り込みをかけていけばインパクトも強く、他の地域との競争に勝てるのではなかろうか。又、中小企業の情報化を積極的に支援する必要があると思う。大企業は自前で情報化に取り組めるが、中小企業にとっては情報化を行うには何らかの支援やその環境の整備をする必要があると思う。最後に、次代を担う学生、若者の教育を真剣に取り組まなければならない。特に大学に於いては、早急に学内の情報基盤の整備を行い、国際化、情報化に対応できる教育を行う必要があると思う。
 今回、久留米・鳥栖地域インターネット協議会の企画でマルチメディア先進地視察に参加しマルチメディア関連の米国の企業やベンチャー企業を訪問でき、とても良い勉強になり、関係の皆様方に心から感謝申し上げたい。できれば今後ともこの様な企画を続けていただきたい。



マルチメディア視察に参加して

久留米工業高等専門学校  松 本 健 一


 「情報 information 」といえばアメリカである。先端技術においていささかの自負をもつ日本としてもこの分野ではアメリカには一目も二目も置かざるを得ない。その国のマルチメディア事情を勉強してこいというのが今回の旅行目的であった。とはいってもあらかじめ研究課題や調査事項を決めていたわけでもないので、先入観なしでマルチメディア事情を見学させてもらおうという気持ちで出発した。今回の視察先は主としていわゆるベンチャー企業と呼ばれているところであり、その実態に直に触れることにはかなりの期待を抱いていた。話には聞くが実態についてはなにもわからなかったからである。

 10月7日(月)が見学の第1日目であった。サンフランシスコ南部のシリコンバレーの荒野に「オラクル社」が朝日を受けて文字どおり光り輝いていた。創立15年の歴史でソフト業界ではマイクロソフトについで世界第2位、データベースでは世界トップになったという企業である。しかもこの巨大な企業が、機を見てコンピュータの世界からネットワーク世界へと展開を試みている。あの500ドルパソコンの開発を進めているのである。新規の分野にどんどん展開するパワーはやはりすごいというほかはない。
 シリコンバレーからさらに南に下ると「スタンフォード大学」がある。創立者のスタンフォード氏は、大学の資産は公共のために開放するという方針のもとで現在も氏の精神はあらゆるところで受け継がれている。訪れた日米技術研究所のダッシャー教授は経営面のみならず教育面で、特に地域社会や生涯教育に対応するインターネット利用の教育方法の開発に力をいれておられた。一研究室から世界的な視野での教育ソフトの開発を行えるというのは、わが国の研究室の中だけの研究におちいりがちな現状と比較して、「役に立つ」研究を推進してる点はさすがである。もっとも、講義が広大な明るいキャンパスの中の薄暗い地階にある教室で行われているのは意外であった。
 3日目にサンフランシスコからサンディエゴに移動した。メキシコとの国境に近いサンディエゴはアメリカでも有数の海軍の基地であると同時に保養地でもある。そのせいか、知的企業集団にとっては格好の立地条件を備えている地域といえる。郊外に広がる広大な荒れ地がベンチャー企業にとっての飛躍の土地となっている。人工的に緑化された工業団地に、沢山の瀟洒な建屋がならんでいる。その中の一つ「ゴルフ・ウェブ社」はゴルフに関する情報をインターネット上でながすベンチャー企業である。アメリカおよび日本だけでもゴルフプレーヤーは数千万人にのぼるという。この市場に目を付け、間もなく採算ベースに乗せることができるということである。ゴルフという特定の分野ではあるが膨大な数の世界中のプレーヤーを対象としてインターネットで情報を提供するという、アメリカならではの発想であろう。同様なベンチャー企業である「グリーンフラッシュ社」は自動車の販売・整備関連の情報をインターネット上で行おうとしている企業である。さらに「インフォメーション・ネットワーク社」はウェブ上で一般人に対して専門医師と協力して医療情報を提供しようとするものである。地域医療のみならず広く世界中からの情報を集め適切なアドバイスを行うことができれば地域差の障害が取り除ける新しい手段となるであろう。これらの企業は新しい企業団地の一角で特定の分野に目標を絞り、なにはともあれ先行しようという意気込みで頑張っている。小さいながらも大きな活力を感じた。
 「カルコム社」はディジタル無線による移動体通信技術を開発している会社である。全米を走るトラック群にたいして衛星通信による情報伝達により効率的な運用を図るというシステムである。このようなシステムは死角とされてきた移動体(個人でもよい)とのコミュニケーションという、これからさらに利用価値がでてくる分野のように思えた。 

短時日での視察旅行では公正で公平な判断ができるとは思わないが、アメリカンスピリットの一端に触れたことは確かである。国内での時差が4時間もある国である。せめて情報の伝達には時差を無くしたいとの発想は当然である。それに建国以前からのフロンティア精神、そのとき以来はぐくまれた自由思想、太平洋と大西洋の両大洋に面した広大な国、これらの条件が恐れを知らぬ駆動力の源となっていることを改めて感じた次第である。
 最後にこのような有意義な企画に参加する機会を与えていただいたインターネット協議会、久留米市役所、勤務先である久留米高専の各位、それになによりも楽しい旅を一緒にしていただいた佐田団長をはじめ団員各位に深く感謝の意を表します。




視察感想

久留米・鳥栖広域情報(株) 足立 務

 去る96年10月6日から10月14日までの日程で、今後の通信ネットワークの進展方向やマルチメディアがもたらす社会的影響について、ネットワークの先進国であるアメリカ(西海岸都市)の実態を調査することを目的とした視察に参加させていただき、ネットワークに関するビジネスを展開中の8社(1大学を含む)を訪問させていただきました。
 今回、訪問させていただいた企業のレベルはさまざまであり、最初の訪問先でシリコンバレーにあるオラクル社のように何万人もの従業員を有する企業から、サンフランシスコ郊外にあるGreen Flash社という従業員数も数名であり、私たち視察団が満足に入る部屋がないような会社とさまざまでした。

 さて、私が最初にアメリカ(サンフランシスコ)を訪れての印象は、想像していたより小さな街であるということでした。 確かに中心部には大きなビルも立ち並んでいるものの中心部から車で10分も走れば、乾燥した剥き出しの土地が広がる状況であり、それを見て、本当にこのような地域(国)がネットワークの先進地域であるのかと疑問をおぼえたしだいでした。 しかし、その疑問は調査をするに従って解け始めました。

 つまり、アメリカは通信インフラがかなり整備されているがゆえに、ネットワーク(電話、FAX、メール等)を通じて行えることは、すべてネットワーク上やってしまうという状況にあり、わざわざ治安が悪く、しかもオフィスの維持コストの高い都心部に居る必要がなく、郊外の治安もよく維持コストも安く済む場所にオフィスをかまえればよくて、距離という物理的な問題は日本ほど大きな問題ではないのです。
 また、アメリカと日本のビジネスのやり方には大きな違いがあり、日本の場合、ビジネスの第一歩は相手先に出向き直接会って話をすることですが、アメリカの場合、前述したように通信ネットワークを利用して済むことはすべて行ってしまうという、まさにアメリカの合理的な考え方があり、これがアメリカの通信ネットワークをより早く進展させている理由の1つのように思われます。
 また、通信ネットワークを進展させているもう1つの理由として、通信コストが安いということがあげられます。
 アメリカに於ける一般電話回線の市内通話料金は固定制であり、いくら利用しても1月当たりの料金は25ドル〜30ドル(州、電話会社によって多少異なる)程度であり、利用者にとっては大変利用しやすい料金システムとなっています。
 そして、企業が利用している専用回線に於いても、通信速度は、T1(1.5Mbps)が普通であり、これは日本の場合と比べるとかなり高速であるように思えます。しかも、利用料金から比べた場合アメリカのT1(1.5Mbps)の料金は日本の64Kbps〜128Kbpsの使用料金程度であります。
 このように、通信インフラの利用コストが安いことが、通信ネットワークをより発展させているようです。

 次に、アメリカに於けるコンテンツ事業についてですが、今回訪問したGolfWeb社、GreenFlash社、InformationNetwork社がこの事業に取り組んでおりましたが、現時点では採算がとれている会社はないようでした。この分野に於いては日本より進んでいるものの、まだまだ発展途中で試行錯誤を繰り返している状況にあり、きちんと体系づけられたものがある状況ではありませんでした。ただ、いずれの会社の経営者も今後の進展性には自信を持っており、アメリカのベンチャー企業のフロンティアスピリットには驚かされるものがありました。そして、このような形のないベンチャー企業に資本を調達するアメリカの金融市場のシステムにも驚かされたしだいでした。

 この視察を通して感じたことは、それぞれの国での文化、宗教、生活環境、法的規制の違いがあるために、ただ単純にアメリカの真似をすれば、日本でも同じようなネットワークビジネスが成り立つ訳ではないということです。
やはり、ビジネスを成り立たせるためには、それぞれの地域に適合したものをいち早く見つけ出し確実な理論のもとに実行していくことであるように思えました。

 最後にこの視察で、ほんの一部ではありますがアメリカに於ける通信ネットワークの現状を自分の目で確かめることができ、このような機会を与えていただいた方々に深く感謝するしだいであります。





米国マルチメディア視察感想文



(財)久留米・鳥栖地域技術振興センター 猪口 徹

 今回の米国マルチメディア視察に際し、感じたことを述べます。
 我々視察団一行は、1996年10月6日(日)、ユナイテッド航空810便でサンフランシスコ国際空港に降り立ちました。私は4年前に、「産学共同研究」、「リサイクル技術」、「行政におけるコンピュータ利用」などをテーマに調査・研究するため単身アメリカを訪れましたので、私にとっては4年ぶり2度目のサンフランシスコでした。
 ホテルはファイナンシャルディストリクトと呼ばれる市街地の北東部の地域にありましたので、フリーウェイを降りた後は市街地の南側から北側に向かって進んだわけですが、4年前には地震の後遺症が見られ、また、治安が悪いと言われ薄汚い感じだった倉庫街が、再開発と新しい産業の息吹で活気を帯びつつありました。その新しい産業こそが、われわれが今回調査するところのインターネットビジネスで、倉庫の壁にURLを大書きしてPRしている会社もあり、その片鱗を感じることが出来ました。
 さて、各企業を訪問しましてまず第一に感じたことは、今のところインターネット接続環境や利用に関しての大きな開きはないということ。つまり、商用利用の開始時期や、それにともなうプロバイダーの増加の具合などは、アメリカと日本でそう大きな差は無いことがわかりました。また、通訳の方は実際自宅でプロバイダーと契約しインターネット接続してありましたが、料金は、わが「インターネット久留米」の方がずっと安いし、ISDNの利用となるとアメリカでは話も聞きませんが、「インターネット久留米」では約30%の方がすでにISDNを使ってあります。
 ただ、大きな違い、すなわち日本が遅れている点、そして今後のインターネットビジネスの発展を阻害するであろう要因は、通信料金の高さです。アメリカでは基本料金だけでどれだけでも使えるのに対し、日本では1月に20時間使ったとして、基本料金+4千円が課金されるわけですから、この差は大きいと思います。ちょうど、道路は同じように通っているがアメリカでは高速料金もいらない、ガソリン代も安いといった話と似てますね。
 インターネットのビジネス利用も、アメリカでもまだスタートして間もないという状況で、成功しているものはわずかしかいません。ただ、ここでも日本との大きな違いを感じたのは、2年後3年後には必ず成功するんだという確信と自信の元に、スポンサーも積極的に探し、やる気満満でインターネットビジネスに取り組んでいる企業を目の当たりに見たときです。日本では2年後3年後には必ず成功するという言葉を信じてスポンサーになってくれるところがあるでしょうか?そして、あれだけ自信に満ちて新規事業を開拓するものがいるのでしょうか?1年後には結果を出さないと見捨てられそうですね。
 彼等は我が社の「企業戦略」というものを必ず話してくれます。そして、地域でまず成功したら全米へ、そして世界へとグローバルにビジネスプランが練られており、従業員数が10人たらずの会社でも積極的に海外のビジネスパートナーを探しているという点が印象的でした。
 大学での利用は日本と比べかなり進んでいるようです。電子メール文化が浸透していてコンピュータの好き嫌いにかかわらずメールを使えないと卒業は出来ないくらい、日常的に使われているようです。休講の通知はメールで、授業の予習は先生の作ったウェブページでといった具合です。日本では、情報系の学生はよく使っているようですが、文系の学生にはまだ浸透していないようです。ただ、日本でもいずれはこうなるんではないかとは思いますが、そのためにも中学、高校からもっとコンピュータやネットワークの体験をさせることが大事ではないかと思います。
 スマートバレー公社に行けなかったのは残念でしたが、野村パシフィックの渋谷社長やスタンフォード大学のダッシャー先生から断片的に話を聞け、また、スマートバレー公社のホームページから得た情報も合わせて概要はわかりました。民間のボランティアが地域活動にここまで大きく関わるというのはすばらしいことだと思います。日本であれば政治家を動かし、行政を動かし、長い年月をかけてやっと実現できるようなことが、民間の有志のかけ声一つですぐにできてしまうんですね。
 さて、今回私は事務局としての参加だったわけですが、最後に、事務局として、どういう理由で各訪問先を選択したのか、また、予定していたのに変更になったところについてはどういう理由だったのかを簡単に述べておきます。

・オラクル社
ネットワーク関係の先進大手企業の視察を希望していたが、データベースソフトで有名なオラクル社が最近ネットワークコンピュータの開発も手がけているということで、同社のインターネットビジネスへの取り組みを聞きたかった。

・野村パシフィック社
今回のツアーをお世話していただいた野村ツーリストの関連企業で、野村総合研究所がマルチメディア情報化に対応すべくシリコンバレーに設立した会社。アメリカにおけるインターネット・マルチメディアビジネスの現状と地域における利用の状況についての話が日本語で聞けるということでお願いした。

・スタンフォード大学
シリコンバレーの先端技術産業を育てた大学として有名で、ぜひ訪問したかったところである。視察メンバーには大学関係者もおられ、大学と地域の関わりの話にも興味があった。

・ゴルフウェブ社
広告収入をうまく使っているということで、数多くあるベンチャー企業の中から紹介された。日本でも多くの雑誌に紹介されている。

・カルコム社
オムニトラックスという衛星通信を使ったトラックの配送管理システムを手がけており、またわずか10年でビッグになった会社としても注目した。

・グリーンフラッシュ社
やはり数多くあるベンチャー企業の中から紹介されたところであるが、着眼点がおもしろいというところで高い評価を得ており、マイクロソフト社から提携の話も出ているという注目株。

・ATMネット社(およびサンディエゴ・ハイパーメディア・センター)
実は視察当日急きょ決まった訪問先である。我々は、行政としての取り組みも見たかったので、サンディエゴ市のお隣のコロナド市を訪問する予定であった。ところが、当日我々の訪問に割り込んできたのがクリントンとゴアだ。大統領選挙戦で各地を回っており、情報ハイウェイを唱える同大統領が情報化への取り組みに熱心なコロナド市を急きょ訪れたというわけだ。ATMネット社は通信の新技術を生かして急激に伸びているベンチャー企業として紹介された。

・インフォメーションネットワーク社
久留米は医者の町であり、久留米大学医学部もあることから、医療情報をインターネットで発信しビジネスに結びつけようとしている同社を訪問することにした。

・(スマートバレー公社)
官民一体となった地域情報化推進プロジェクトということで、ぜひ訪問したかったが、職員数が少なく、当日大きなイベントがあり対応できる人間がいないということで訪問できなかった。しかし、報告書の中で述べているように、別の訪問先で話を聞き、一部情報をキャッチすることが出来た。