Kurume・Tosu Internet Conference

「The Journal of Internet」 Volume4,2000 || H O M E || || 3 || 4 || 5 || 6 || 7 || 8 || 9 || 10 || 11 || 12 || 13 || 14|| 15

乗りが軽くなったインターネット

久留米工業大学電子情報工学科講師
佐塚 秀人 
Hideto Sazuka

 

 

津波のように押し寄せてきたインターネットの波は日本全土を飲み込んでしまったようで、気が付けば誰でも電子メールが読み書きできるようになっているようです。非常勤講師で行っている短大の女子学生にメールを送る課題を出したところ、「自宅のパソコンから書いています。」とか、「i-modeから送っています。」とか、「先週買ったパソコンから書いています。」といったメールが来たんです。きっかけはパソコンの低価格化と携帯電話でしょうかね。インターネットがどういく仕組みでとか、IPアドレスがどうのこうのといった話はもはやどうでもいいようです。
最初のころは、インターネット接続といえば、物理的なネットワーク接続だけでなく、IPアドレスの申請、ドメイン名の申請、さらにネームサーバの設定、そして接続完了の連絡、アナウンスと結構たいへんな作業でした。まずは技術者として責任やモラルが最優先で動いていました。インターネットは神聖なものだったのです。
いまは違いますね。とりあえずなんらかの接続手段があれば、無料のメール、無料のWEBサーバ、無料のメール転送、無料のドメイン名まであるのです。無料サービスだけでビジネスができてしまうかもしれません。
無料のメールはWEBメールとしていろいろなところで提供されています。MicrosoftのHotmailは、WEBブラウザではなく、Outlook Expressで読み書きできます。メールのアカウントなんてお金を出す必要もないのです。名前がhotmail.comはいやだと思えば、無料の転送サービスがあります(フリーメールには転送できなくしているところもあります)。
佐塚研究室のアドレスをsazuka@sazlab.office.ne.jpというようなもっともらしいアドレスが無料で作れてしまいます。
WEBのページも同じですね。GeoCitiesなんかは有名です。これもドメイン名が気に入らなければWEBの転送サービスもあるようです。 さらに自宅にサーバをと思えば、もうすぐ久留米でもサービスが開始されるであろう時間無制限ISDN接続のフレッツ・アイでサーバを運用する方法があります。もちろんアドレスはダイナミックに振られるのでしょうが、要は切らなければIPアドレスは変わりません。電源切断なのでやむをえなく回線を切断することもあるでしょう。そんな場合は自分で名前とアドレスの割り付けを変更すればいいわけです。そこで登場するのが無料ダイナミックDNSです。http://www.dyndns.org/という無料のドメイン名サービスが提供されています。ここで設定を変更すれば常に同じ名前でサーバをアクセスできるようになります。ここで得られるドメイン名は最後が .dyndns.orgとなりますが、自分のドメイン名が欲しいと思えばそれも実は簡単です。さすがにこれは無料というわけにはいきませんが、http://www.onamae.com/あたりをアクセスしてみましょう。答えがあります。
実は、私も最近自分のドメイン名をとりました。sazuka.netです。中田英寿のnakata.netみたいでかっこいいでしょう。sazuka.XXXというのはまさかとられてないだろうと思っていたのですが、いつのまにかsazuka.comがあるのです。
こりゃまずいと思って速攻でsazuka.netをとり、1時間でDNSサーバを立ち上げました。DNSは本当に常時接続しているホストがないといけないのですが代行もあります。ドメインの管理費用は3年で1万円というのを選びました。1年とか2年もOKです。全くのオンライン手続きだけで、http://sazuka.net/もOKだし、hideto@sazuka.netもできてしまいました。DNS設定と合わせて2時間ぐらいの作業でした。次の日にはもうsazuka.netが使えました。
まあ、値段が安くなったというより、感覚というか乗りが安くなりました。接続の予定を立てて、打ち合わせを何回もやってtmcnet.or.jpを立ち上げたことが嘘のようです。
こんな最近のインターネット事情に思うことは、まず1つ目はやはり中身が勝負なんだろうなあという点、2つ目はインターネットの名前(ドメイン名やメールアドレス,URLなど)はまったく信用できないということです。
hideto@sazuka.netなんてメールアドレスが使えますが、実はどこにもsazuka.net専用のメールサーバなんて置いていないし、.netなんてついていてもプロバイダでもなんでもないのです。実は普段使っている大学の机の上のマシンにsazuka.netも受け付けてねって1行設定を変更してhideto@sazuka.netはsazuka@dis.kurume-it.ac.jpだよって別名設定を書いてあるだけなのです。送るほうはOutlook ExpressやNetscape Messengerの設定で差出人をhideto@sazuka.netにして出せば受けとった人は謎のプロバイダsazuka.netからメールが来たのだと思うわけです。私の兄のメールアドレスも、XXX@sazuka.netですが、これも実は私の机の上のマシンが@niftyに転送しているだけです。
ここまで読んで、悪事も含めていろいろ遊びも思い浮かべた方もいるでしょう。実際いいことも悪いこともできてしまうのです。そこで次の話となると、どうして信用をインターネット上に成り立たせるかという話になります。電子認証とか暗号電子メールといった話はこのあたりからスタートすると思ってください。固定IPアドレス、ドメイン名がステータスのように思ってきましたが、今の乗りではそれもちょっとした遊びのレベルになってしまったようです。軽くなるインターネットと、重みをもつインターネット、またまた新しい展開があるかなと思う今日この頃です。

 


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